「怒り」や「イライラ」の感情に振りまわされない為に、まずは「怒り」が生まれる仕組みを知りましょう。
この仕組みを知れば、「あぁぁ、そこに目を向ける必要があったのかぁ」と、目からウロコが落ちる気持ちになるかと思います。
仕組み(原因)さえわかれば、セルフコントロールしやすくなります。
「怒り」が生まれるメカニズム(基本構造)について
心理学において、「一次感情」「二次感情」という考え方があります。
〇 一次感情:本来、自分が感じた気持ち
〇 二次感情:「一次感情」が蓄積し、あふれてしまった感情
そして、「怒り」はこの「二次感情」に当たると言われています。
イメージとしては、以下のような感じです。
もう少し具体的に見てゆきましょう。
人は何かの出来事に遭遇した場合、最初に「一次感情」を持ちます。それがネガティブな感情であれば、ストレスがたまります。
その蓄積されたストレスは、「二次感情」を生じさせます。
許容範囲を超えたストレスは強いエネルギーを持って外へ出てきますので、そちらに意識が集中し、その前に感じていた「一次感情」のことは気づかないままとなってしまいがちです。
その結果、「二次感情」である「怒り」にばかりフォーカスを当ててしまいますが、実はその裏側で本来、別の感情(一次感情)を持っていたはずなのです。その「一次感情」に目を向けなければ、真の問題解決にはつながりません。
「一次感情」の代表的なものには、以下のような感情があります。
上記からもわかるように、「一次感情」は決して悪いものではありません。
また、その結果、生まれる「二次感情」自体も、悪いものではありません。どれも人間の自然な感情のひとつです。
これらの感情を無理に消し去ってしまおうとすると、自分自身の中に抑圧され、別の問題・不具合が生じてしまいます。
大切なことは、「一次感情」に目を向け、「怒り」を上手くコントロールすることです。
「怒り」の感情を悪者扱いしないことについて
先に触れた通り、「怒り」の感情は悪いものではありません。人間の自然な感情のひとつです。
その「怒り」の感情を無理に消し去ってしまおうとすると、自分自身の中に抑圧され、別の問題・不具合が生じてしまいます。
更に、「怒り」はポジティブな行動を起こす為のきっかけ(起爆剤)となることもあります。
例えば、こんな「怒り」の場面で
例えば、ライバルに営業成績で負け続けている場合、「悔しさ(一次感情)」が積み重なり、「怒り(二次感情)」が生まれてきます。
その「怒り」を部下や同僚にぶつけてしまうとパワハラ事案となりますが、その「怒り」を自分自身の燃料として、新しい企画や取り組みにトライした場合、ポジティブな行動につながっている為、その「怒り」は良いものだと言えるでしょう。
また、期待している後輩が真摯に仕事に取り組まず、手を抜いてばかりいる場合、「残念(一次感情)」という感情が積み重なり、「怒り(二次感情)」が生まれてきます。
その「怒り」を後輩本人に対して怒号する形でぶつけてしまうとパワハラ事案となりますが、「残念」と思っている自分自身の気持ちに目を向けて、その気持ちを伝えながら、今後の相談ができたならば、「残念」という気持ちに気づくきっかけとなった「怒り」の感情は、決して「悪い」ものだとは言えないでしょう。
つまり、「怒り」の感情自体が問題ではないのです。
「怒り」で問題視されるのは、その表現方法なのです。
「怒り」の場面で意識すべき重要なポイント
必要に応じて、誰かを注意したり、怒らないといけない場面もあるかと思います。
その行為自体を完全否定してしまうと、誰も、何も、できなくなってしまいます。
ましてや、マネージャーのポジションにいる人たちは、適切な行動が取れなくなって困ってしまうことでしょう。
重要なことは、「適切に」「冷静に」表現することです。
加えて、その基準軸が、昔と大きく変わって、今、とても厳しくまわりから見られていることを意識することです。
過度な「怒り」の表現(怒鳴ったり、必要以上にチクチク言ったり)は、即、パワハラ扱いになる可能性があることを意識することが重要です。
パワハラは、相手にとっても、あなたにとっても、幸せな結果を生みません。
同じ「怒り」の感情を持ったとしても、適切に表現することで、相手にとっても、あなたにとっても、お互いにハッピーな状況にたどりつけるよう、上手く感情をコントロールしてゆきましょう。
「怒り」が生まれる根底にあるものについて
「怒り」が生まれるメカニズム(基本構造)は、前述の通り、「一次感情」が生まれた後、ストレスが許容範囲を超えると「二次感情(怒り)」を生み出す流れになると考えられています。
そこで「一次感情」に目を向け、「怒り」を上手くコントロールすることが重要となります。
この「一次感情」に目を向けるにあたり、もう少し深く、心の仕組みについて見てゆきましょう。
アドラー心理学の考え方をベースにすると、感情を表現する場合、伝えたい「相手」がいて、達成したい「目的」がある、とされています。
シンプルに言えば、「こうしたい」「こうあって欲しい」という自分の目的(理想)を達成する為に、相手に感情を向ける、ということです。
この「自分の目的(理想)」をわかりやすく言い直すと、
〇 こうあるべき
〇 こうしなければならない
〇 こうあって欲しい
という「べき論」思考となります。
「こうあるべき」という、自分自身の持つ理想に対して、現実で齟齬が生じる場合、その「理想と現実の間にあるギャップ」に対して、いろいろとネガティブな感情が生じます。そのネガティブな感情が「一次感情」です。
この「一次感情」が生じた後、上手く早めに対処できれば良いのですが、一般的に「一次感情」は気づきにくく、内容・状況によっては、すぐに「二次感情(怒り)」へ移行してしまう為、「怒り」が生じてから実感することが多いようです。
その為、「怒り」の感情を認識してから、上手くコントロールし、対処することが、現実的な対応策となるでしょう。
ところで、上述のような「べき論」思考が根底にあることがわかると、「怒り」の感情が「抽象的なもの(姿かたちの捉えきれないもの)」ではなく、自分自身の理想に則った「形あるもの」に見えてきませんか。
「怒り」は勝手にわいてくるものではなく、生まれてくるきっかけ(ロジック)は、自分自身の中にあるのです。
そのことを意識するだけでも、今後、怒らない為の対策を取りやすくなると思います。
まとめ
『「怒り」のメカニズム』について、まとめ情報は以下の通りです。
この記事のまとめ
- 心理学では「一次感情」「二次感情」という考え方があり、「怒り」は「二次感情」に当たるとされる。
- 「一次感情」が生まれる根底に、自分自身の理想に対する「べき論」思考が存在する。
- 「怒り」は勝手にわいてくるものではなく、生じるきっかけは自分自身の中にある。
- 「怒り」を悪者扱いせず、上手な付き合い方を知ることが重要。